Character.AIの破産で会話データはどうなる? 書き出しの依頼は早めに、削除は届いてから
Character.AIが10月12日に米国で破産を申請した。ディズニーの入札に会話データは含まれていないが、他の買い手が現れれば売却の対象になりうる。書き出しは届くまで3〜4週間が目安で、入札締切の11月20日までに受け取りたいなら、計算上は10月23日ごろまでの依頼が目安になる。削除してもすべてが消えるわけではない点と、日本の個人情報保護法がどこまで歯止めになるかも整理する。
この記事は2026年10月15日時点の情報をもとにしています。その後の状況の変化は原則として反映していません。
キャラクターと会話できるAIサービス「Character.AI」を運営するCharacter Technologiesが、10月12日(米国時間)に米国で連邦破産法第11章(チャプター11)の適用を申請した。目的は、裁判所の監督のもとで会社を売ることだ。サービスはいまも動いている。
これまで打ち明けてきた会話は誰かに売られるのか、残したい会話をどう保存するか、アカウントは消したほうがいいのか。この3つを、裁判所に出された書類と公式のヘルプをもとに整理する。
先に結論
いま決まっている入札で、会話データを買う会社はない。 最初の入札者であるディズニーは、技術のライセンスに2000万ドルを払う案を出しているが、アプリ、ユーザーのアカウント、ユーザーが入力した内容とAIの返答は、対象から外されている。ただ、外されたものは売り物として会社の手元に残っている。アプリやデータごと買う会社が11月20日の入札締切までに現れれば、会話データが売却の対象になりうる。
会話を残したいなら、書き出しは早めに依頼しておく。 公式ヘルプによると、書き出しは届くまで3〜4週間かかることがあり、届いたダウンロード用リンクは7日で切れる。入札締切の11月20日までに受け取りたいなら、計算上は10月23日ごろまでの依頼が目安になる。ただ、3〜4週間は処理期間の目安で、その期間内に届く保証はない。
アカウントを消すなら、書き出しのファイルを受け取ってからにする。 削除は取り消せず、先に消すと書き出しも受け取れなくなる。消しても、他の人に公開したキャラクターは残る場合がある。すでにAIの学習に使われた分がどうなるかは、会社が説明していない。
何が起きた?
Character Technologiesの最高経営責任者(CEO)は裁判所への宣誓供述書で、高い訴訟費用、黒字化の難しさ、投資家が訴訟リスクを嫌ったことを理由に挙げている。同社は、10代の利用者の自殺や自傷をめぐって家族から訴えられてきたほか、米国の複数の州から調査や提訴を受けている。破産の前にも別の銀行が約28社に買収を打診したが、使える提案は出てこなかった。
公式ブログのFAQによると、いまの状況は次のとおりだ。
- サービスはこれまでどおり使える
- 有料プランは有効で、請求も今のところ変わらない。有料機能に影響する変更があれば、事前に知らせるとしている
- 売却の手続きは11月末か12月初めに終わる見込み
- サービスを続ける買い手が見つからなければ、プラットフォームは閉じる
会社が裁判所に提案している日程は次のとおりだ。裁判所の判断で変わることがある。
| 日付(米国東部時間) | 予定 |
|---|---|
| 10月12日 | 破産を申請 |
| 11月20日 午後5時 | 入札の締切(日本時間では11月21日午前7時) |
| 11月23日 | ディズニー以外に有効な入札があった場合の競売 |
| 11月24日 | 売却を認めるかを決める審理 |
| 12月17日 | ディズニーとの取引を完了させる期限 |
会話データは売られるのか
ディズニーの入札には入っていない
ディズニーが払う2000万ドルは、Character.AIの技術の一部を使う権利(独占ではない、期限のないライセンス)の対価だ。裁判所に出された売却の申立書は、ライセンスの対象から「エンドユーザーのデータやデータベース」「ユーザーを特定できる個人情報」「ユーザーが入力したもの」を外している。AIが返した文章も含まれない。報道によると、ディズニーは別に、Character.AIの社員約65人を採用する。
他の買い手が現れれば、対象になりうる
ディズニーの入札は、ほかの入札の基準になる「最初の入札」だ。アプリ、アカウント、会話データ、学習済みのモデルは会社の手元に残っていて、ほかの会社が入札できる。
Character.AIのプライバシーポリシーには、合併や資産の売却にあたって「特定の情報」を開示できると書かれている。どの情報が含まれるかは書かれていない。会社はブログで、ユーザーの情報は「引き続きプライバシーポリシーのもとで守られる」と説明しているが、会話が売却の対象かどうか、買い手がこのポリシーに縛られるかについては、報道機関の問い合わせにも答えていない。
米国の破産法には、個人情報の売却が会社のプライバシーポリシーと食い違う場合に、裁判所が「消費者プライバシーオンブズマン」という中立の専門家を置く仕組みがある。ただ、Character.AIのポリシーは事業の売却時の開示を明記しているので、食い違いはないと会社が主張する余地がある。
米国の40の州・地域が条件をつけた
10月14日には、39州とワシントンD.C.の司法長官が、裁判所に28ページの文書を出した。買い手に求める9つの条件を挙げ、売却に異議を申し立てる権利や、オンブズマンの選任を求める権利を残すと書いている。条件には次のようなものがある。
- 自己申告の生年月日だけに頼らない年齢確認
- セラピストや医師、弁護士を名乗るキャラクターの削除
- 利用者が同意した範囲を超えて、会話をAIの学習や広告に使わないこと
- データが売られる前に、すべての利用者がデータを削除できる機会を設けること
文書は、心の健康に関する打ち明け話を含む会話が多いことや、18歳未満が大人として登録されている可能性が高いことを、懸念の理由に挙げている。会話の中に職場や住まいの話が混ざるため、名前を消すだけでは個人を特定できない状態にならない、とも指摘している。
ただし、これは米国の州が出した条件で、裁判所が採用するかはまだ分からない。オーストラリアの新聞の報道によると、破産の書類で売却を知らせる先に挙がっている当局は、米国の連邦取引委員会(FTC)、司法省、州の司法長官で、外国の規制当局は入っていない。
日本の個人情報保護法はどこまで歯止めになるか
日本の個人情報保護法は、日本にいる人にサービスを提供する外国の企業が、その人たちの個人情報を外国で扱う場合にも適用される(171条)。そのうえで条文から読み取れる範囲を整理すると、事業の売却に伴うデータの引き継ぎそのものを止める仕組みにはなっていない。
- 事業の売却に伴う引き継ぎには、本人の同意が要らない。 個人データを他社に渡すには原則として本人の同意が必要だが、合併などによる事業の承継に伴って渡す場合は、この「第三者への提供」に当たらない(27条5項2号)
- 買い手は、元の利用目的の範囲でしか使えない。 事業を引き継いで個人情報を得た会社は、本人の同意なしに、引き継ぐ前の利用目的を超えて扱ってはいけない(18条2項)
この2つは別の問題だ。1つめはデータを渡すときに同意が要るか、2つめは引き継いだ後にどう使えるかを決めている。
2つめの制限は、Character.AIの場合は歯止めとして働きにくいかもしれない。プライバシーポリシーに書かれた利用目的には、AIや機械学習のモデルの学習、利用者に合わせた広告がすでに入っている。このため、事業の承継に伴う引き継ぎというだけでは、買い手がこうした目的で使うことを防げない可能性がある。
ただし、法的な評価は条件によって変わりうる。海外の事業者にデータが移る場合は、外国にある第三者への提供の規制(28条)を別に検討する必要がある。買い手が具体的にどう使うかによっても評価は変わる。ここでの整理は条文から読み取れる範囲にとどめていて、この取引についての法的な判断ではない。
一方で、利用者から請求できることもある。会社がそのデータを使う必要がなくなった場合や、扱い方によって本人の権利や正当な利益が害されるおそれがある場合には、利用の停止や消去を請求できる(35条5項)。会社に理由があると判断されれば、応じる義務がある。Character.AIのプライバシーポリシーは、権利の行使の窓口としてヘルプセンターの依頼フォームとメール(privacy@character.ai)を挙げている。ただ、地域ごとの詳しい説明があるのは欧州、英国、米国の居住者向けだけで、日本の利用者向けの説明はない。
日本の個人情報保護委員会がこの件で何か対応しているかは、確認できなかった。
書き出しの手順
公式ヘルプ(10月8日更新)の手順は次のとおりだ。
Web
- プロフィールを開く
- 「Profile Settings」を押す
- 「Account」を押す
- 「Manage Account & Data」を押す
- 「Export Data」を押す
スマホのアプリ
- プロフィールを開く
- 設定(歯車)のアイコンを押す
- 「Legal & Privacy」を押す
- 「Export Data」を押す
依頼すると、アカウントに登録したメールアドレスに、準備ができしだいダウンロード用のリンクが届く。
いつまでに依頼すればいいか
ヘルプには「3〜4週間かかることがある」と書かれている。依頼した日と届く日の目安は次のとおりだ。
| 依頼した日 | 3週間後 | 4週間後 |
|---|---|---|
| 10月15日 | 11月5日 | 11月12日 |
| 10月23日 | 11月13日 | 11月20日 |
| 10月30日 | 11月20日 | 11月27日 |
入札締切の11月20日までにファイルを受け取りたいなら、10月23日ごろが計算上の目安になる。10月30日以降に依頼すると、4週間かかった場合は売却審理の予定日(11月24日)を過ぎる。
ただし、これは「3〜4週間」というヘルプの目安をそのまま当てはめた計算で、その期間内に届く保証はない。破産の報道で依頼が集中して、もっと時間がかかる可能性もある。確実に間に合うとは限らないので、残したい会話があるなら、日付の目安を待たずに早めに依頼しておくほうがいい。
入札締切は、データが実際に買い手へ移る日とは別だ。入札締切は買い手の候補が出そろう日で、データが移るのは裁判所が売却を認め、取引が完了したときになる。その日はまだ決まっていない。
届いたらすぐ保存する
リンクは、メールが送られてから7日で使えなくなる。迷惑メールのフォルダに入っていないかも確かめておく。ヘルプには、書き出しのファイルに何が含まれるかの一覧が載っていない。会話だけでなく、作ったキャラクターの設定も残したい場合は、ファイルを開いて中身を確かめ、足りなければキャラクターの画面から自分で控えておくほうが確実だ。
アカウントを消すかどうか
消す前に知っておくこと
ヘルプによると、アカウントの削除は取り消せない。Webでは書き出しと同じ「Manage Account & Data」の中の「Delete Account」、アプリでは設定の「Remove Account」から削除する。
- 書き出しのファイルを受け取る前に消さない。 アカウントがなくなると、書き出しの依頼も受け取りもできなくなる
- 有料プランは別に解約する。 App StoreやGoogle Playで払っている場合、ヘルプは、アカウントの削除で課金が止まるかを書いていない。ストアの定期購入の画面から解約しておく
- 公開したキャラクターは残ることがある。 プライバシーポリシーには、他の利用者に公開したキャラクターは、作った人がデータとアカウントを削除しても残す権利がある、と書かれている。キャラクターの設定文に自分の名前や身の回りのことを書いていたら、消す前に書き換えておく
- 学習済みのモデルから消えるかは分からない。 Character.AIは、会話をモデルの学習に使うとプライバシーポリシーに書いている。アカウントを消したときに、すでに学習に使われた分がどうなるかは説明していない。学習済みのモデルも、ディズニーのライセンスの対象外として売り物に残っている
プライバシーポリシーには、法律を守るためなどの理由で一部の情報を残すことがある、とも書かれている。アカウントの削除と、会社の持つ個人情報の削除は、同じとは限らない。個人情報の削除まで求めたい場合は、上に書いた依頼フォームかメールで、アカウントに登録したメールアドレスから依頼する。本人確認がある。
使い方別の判断
| 状況 | すること |
|---|---|
| これからも使いたい | 書き出しだけ依頼しておく。サービスが閉じたときの控えになる |
| 会話を保存し、会社に残る個人情報をできるだけ減らしたい | 書き出しを依頼し、ファイルを保存してからアカウントを削除する。個人情報の削除依頼も出す。それでも、会社が持つすべてのデータがすぐ消えるとは限らない |
| 会話は要らないので、すぐ消したい | 有料プランを解約してから削除する。公開キャラクターの設定文を先に見直す |
| 子どもが使っていた | 一緒に書き出しを依頼し、削除するかを話し合う。米国の州は、18歳未満の会話が大人のものとして記録されている可能性が高いと指摘している |
現時点で分からないこと
- ディズニー以外に、アプリや会話データを買う会社が11月20日までに現れるか。破産前の売却の打診では、使える提案が出てこなかった
- 買い手が現れなかった場合に、手元に残った会話データやモデルがどう処分されるか。会社は「プラットフォームを閉じる」としか書いていない
- 米国の州が求める「売却前に削除できる機会」が、日本の利用者にも提供されるか。州の条件は「すべての消費者」と書いているが、裁判所が採用するかが決まっていない
- 日本の利用者がどれくらいいるか。会社は現在と過去の利用者を合わせて約1億6300万人と裁判所に説明しているが、国別の数は出ていない
まとめ
ディズニーの入札だけで終われば、会話データは誰にも買われないまま会社の手元に残り、サービスは閉じる方向になる。他の買い手が現れた場合は、会話データも売り物になりうる。どちらの場合でも、残したい会話はいま書き出しを依頼しておいたほうがいい。届くまでの目安は3〜4週間でも、その期間内に届く保証はなく、入札締切は11月20日に迫っているからだ。
会話を残したい場合は、まず書き出しを依頼する。アカウントを削除するかは、ファイルを受け取ってから判断するのが基本だ。ただ、売却の手続きの進み方によって状況が変わる可能性があるので、Character.AIの公式ブログや発表も確認しておきたい。日本の個人情報保護法では、事業の承継に伴う引き継ぎに本人の同意は要らないとされている。会社に残る自分の個人情報を減らしたいなら、利用者が自分でできるのは、ファイルを受け取ったあとのアカウント削除と、個人情報の削除依頼だ。ただ、それで会社が持つすべてのデータがすぐ消えるとは限らない。
出典
一次情報
- An Update on Character.ai - Character.AI Blog(2026年10月12日。サービスの継続、有料プラン、売却の見込み時期)
- How do I download my data? - C.AI Help Center(書き出しの手順、3〜4週間、リンクの有効期限7日)
- How do I delete my account? - C.AI Help Center
- Privacy Policy - Character.AI(2026年7月1日施行。事業の売却時の開示、利用目的、公開キャラクターの保持)
- Notice of Interest and Reservation of Rights by the Coalition of the State Attorneys General - 米国デラウェア州連邦破産裁判所 Case No. 26-11603(2026年10月14日)
- Attorney General James Urges Court to Protect Children and Consumers in Character.AI Bankruptcy - ニューヨーク州司法長官
- 個人情報の保護に関する法律 - e-Gov法令検索(18条2項、27条5項2号、28条、35条5項、171条)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) - 個人情報保護委員会(事業の承継)
- 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編) - 個人情報保護委員会(事業承継に伴う外国への提供の扱い)
報道・解説
- Character.ai faces 40 attorneys general over who can buy its users’ chats - PPC Land(9つの条件、ディズニーのライセンスの対象外の資産、利用者数約1億6300万人)
- Character.ai drew one unusable offer from 28 potential buyers - PPC Land(破産前の売却の打診)
- Character Technologies, Inc. - Bondoro(入札手続きの日程)
- Your Chatbot Just Went Bankrupt. What Happens Now to Your User Data? - KQED(CEOの宣誓供述書、会社の回答)
- Australian kids’ AI chats for sale as chatbot app goes bankrupt - The Sydney Morning Herald(売却の申立書の除外条項、通知先の当局、ディズニーによる社員の採用)
- Character.ai bankruptcy: How to export your chats before the sale - Notebookcheck(消費者プライバシーオンブズマンの仕組み)
- Now that Character.AI is going bankrupt, what happens to all of its users’ data? - The Verge